インサイドセールスの成果を加速化させるためにはメンバー教育が重要なワケ
業務効率化や属人化解消といった営業組織改革を目的に、インサイドセールスを導入する企業が増加しています。導入中の企業の中には、「インサイドセールスでのアプローチがテレアポと変わらない活動になってしまっている」「顧客からのアポが取れない、クレームが起きてしまった」など、メンバーのインサイドセールスに対する理解不足、スキル不足が原因で期待した成果が出せないことに悩みを抱えるケースも多いようです。インサイドセールスで確実な成果を上げるには、メンバーひとり一人に必要なスキルを見出し、それらを教育する仕組みを整備し、実行することが重要です。今回の記事では、インサイドセールスメンバーへの教育の重要性や身に付けるべきスキル、教育の手法について解説します。
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目次[非表示]
- 1.インサイドセールス教育が必要な理由
- 1.1.① ノウハウの不足
- 1.2.② 教育体制が整っていない
- 2.インサイドセールスメンバーが身につけるべきスキル
- 2.1.① コミュニケーション力・傾聴力
- 2.2.② 顧客理解力
- 2.3.③ 示唆力
- 3.インサイドセールスチームの育成手法
- 3.1.① ロープレ
- 3.2.② セミナー/勉強会
- 3.3.③ E-learning
- 3.4.④ 音声解析
- 3.5.⑤ 1on1
- 4.まとめ
インサイドセールス教育が必要な理由
電話やメールといった非対面で顧客へアプローチを行うインサイドセールス活動で成果を上げるには、組織全体を底上げするスキルが必要です。
本章では、調査結果から見えるインサイドセールス教育不足によって発生する課題から、インサイドセールス教育の重要性について解説します。
① ノウハウの不足
インサイドセールスメンバーが十分なスキルを身に付けられない原因のひとつが、社内でのノウハウ不足です。株式会社ジードが実施した「インサイドセールスに関する取り組みの実態調査」では、インサイドセールスのSDRの対応について課題としている点として「社内にノウハウがない(41%)」がもっとも多くあがりました。
社内のノウハウ不足によってメンバーへ適切な教育が受けられない環境では、メンバーがスキルやテクニックを得る機会損失につながりやすくなります。同調査では、「架電しても営業担当者により、アポ獲得率が大きく異なる(29%)」「適切なナーチャリングがわからない(16%)」といった回答も、課題としてあがりました。インサイドセールスメンバーのスキル不足の課題が慢性化すると、メンバーの経験や知識にバラつきが出てしまったり、マーケティングから引き渡されたリードをうまく育成できないという状況に陥りやすくなります。その結果、定常的に活動を続けているものの商談数が増えない、という負のループを招く可能性もあります。
このようなことが起きないよう、インサイドセールスメンバーのスキルを均一化し、チーム全体で安定的に成果を出すためには、インサイドセールスメンバーへの適切な教育が重要です。
② 教育体制が整っていない
メンバーへ教育を与えられる体制が整っていないことで、インサイドセールスの組織づくりそのものが頓挫してしまうこともあります。株式会社IDEATECHがベンチャー企業の営業担当者102名を対象に実施した「インサイドセールスに関する実態調査」では、インサイドセールスをおこなっていない企業に対する理由を問う質問の回答として「人手不足(26.7%)」「専門知識の不足(23.3%)」が多くあがりました。一方でインサイドセールスを実施している企業が実施している理由としては、「効率化の向上(55.6%)」「データ分析への活用(48.1%)」「コスト削減(40.7%)」があがっています。
(出典:PR TIMES「インサイドセールス未実施のベンチャー企業は「人手」と「専門知識」不足が浮き彫りに 実施企業では、「適切なリードの識別と優先順位付けの難しさ」に課題」)
インサイドセールスを実施することで、営業組織の強化や利益の向上といった企業の事業成長にもつながる多くのメリットも期待できます。人材不足やノウハウ不足などが原因で教育体制が整えられずインサイドセールスも導入できないと、企業としての能力や競合他社からの優位性も低下してしまう恐れもあると言えるでしょう。よって外部支援などもうまく活用しつつ、ノウハウや教育体制面での課題を解決し、インサイドセールス導入を推進することをおすすめします。
インサイドセールスメンバーが身につけるべきスキル
インサイドセールスで成果を上げるために必要なスキルは多岐にわたります。これからインサイドセールスの教育体制を構築する際に、参考となる重要視したいスキルを順に解説します。
なおメンバーへ適切な教育を行うためには、メンバーの現状レベルを把握し計画的に研修などを提供することが重要です。以下の記事では、メンバーの現状レベルの理解に役立つチェック表を紹介しています。
① コミュニケーション力・傾聴力
インサイドセールス活動では、顧客が抱えている課題に対して、商材による解決方法を提案することで商談につなげます。顧客が抱える課題をうまく引き出すために必要なスキルが、顧客との対話を進めるコミュニケーション力と、顧客の話に耳を傾け、ヒアリングを行う傾聴力です。傾聴力を発揮するのに有効な手法に「SPIN話法」と「ページング」があります。
SPIN話法は、顧客に対しSituation (状況質問)、Problem(問題質問)、Implication (示唆質問)、Need-payoff (解決質問)の流れに沿って質問を投げかけます。SPI話法の順序で質問を投げかけることで、会話の中で顧客の潜在的ニーズを自然と引き出せるのが特徴です。すべての質問の回答が集まった時点で商材の提案をすることで、顧客が自分の意思で商材に対して前向きに検討や導入できるように導くことが可能です。
ページングとは、相手と話し方、声の抑揚、呼吸のリズムなどを合わせるコミュニケーションの手法です。顧客と話し方の雰囲気を合わせることで、無意識に「自分と似ている」と認識させることが期待できます。顧客は安心感や信頼感、親しみや好感を持つことができ、インサイドセールスでのコミュニケーションの円滑化に役立ちます。
SPIN話法やページングを取り入れることで、コミュニケーション力や傾聴力が身に付いていないメンバーでも、顧客とスムーズなやり取りや課題の発掘が期待できます。
② 顧客理解力
インサイドセールスで特に重要視したいスキルが、顧客理解力です。見込み顧客への理解が浅い状態でインサイドセールスの施策を行おこなっても、顧客へ有益な情報を提供できなかったり、共感を得られる提案ができなかったりするため、効果が出ません。たとえば顧客に関する情報が不足している状態で状況質問や提案をしても話が発展しなかったり、顧客の状況に合わせたトークを展開できない、といった事態が発生し、商談化は難しいでしょう。
顧客理解力を分解すると、「顧客を知る力」と「見極める力」のふたつに分けられます。顧客を知る力を得るには、顧客企業の状況や業界の動向、意思決定プロセス、業務内容といった情報を収集し、徹底的に把握する行動を行う必要があります。また顧客の業界に関する共通情報は、AIツールを活用することで効率的な収集が可能になります。意思決定プロセスや予算といった独自情報は、前述のコミュニケーション力や傾聴力を発揮し、インサイドセールスによって収集していきます。
見極める力を得るには、顧客へ商談を提案するタイミングを見極めることが重要です。顧客の商材への確度が高い状態を見極め、ベストタイミングで商談を提案することで商談化が実現します。顧客の商材への確度を推察するためにも、顧客理解が必要です。
③ 示唆力
示唆力とは、発覚した問題点や課題が今後他の問題や他者、他部門に与える影響を確認させる力です。インサイドセールスによって顧客の潜在課題を炙り出せても、課題や悩みを聴いた次の行動をおこなわない限り顧客の育成にはつながりません。示唆力によって潜在課題やニーズが他に与える影響を認識させ、課題解決が必要であることを自然と理解させる、いわば上手に誘導させることではじめて、商材への確度を高めることが期待できます。
示唆力を発揮する方法の一つが、示唆質問です。示唆質問では、顧客の悩みや課題から想定される影響を質問として投げかけます。たとえばWeb制作会社のインサイドセールスが「自社内でWeb担当者のリソースが足りず、更新頻度が落ちている」といった課題をヒアリングした場合、以下のように示唆質問をおこなうことで「更新頻度が落ちることによる影響」を顧客に認識させることができます。
「更新頻度が落ちると・・・」
- Webサイトに掲載されている情報が古くなりませんか
- 情報が古くなると、誤った情報が掲載されることがありませんか
- ユーザーに誤った情報を提供することになりませんか
- 企業としての信頼性が低くなりませんか
- 顧客離れが起きませんか
- 競合に顧客を取られてしまいませんか
- 売上が下がってしまいませんか
示唆質問を投げかけることで、質問内容のすべての原因が更新頻度が低くなっていることから来ている、と顧客は認識します。その結果、将来的に重大なトラブルや損失を回避するために商材の検討や導入に入る可能性が高くなるでしょう。
顧客の発言やヒアリングした内容を起点に効果的な質問を投げかけられるように示唆力を高めるには、顧客の経営方針や経営課題、業務内容を理解することです。顧客理解とともに、自分の得意な質問パターンを確立しておくことで、効果的な示唆質問を投げかけられることが期待できます。
インサイドセールスチームの育成手法
インサイドセールスの育成手法にはさまざまなものがあります。育成手法は得たいスキルや目的に応じた適切なものを選ぶことで、メンバーのスキル取得につながります。インサイドセールスチームの育成手法をメリット、デメリットとともに解説します。
① ロープレ
ロープレではインサイドセールス側と顧客側に分かれて、架電時の自己紹介から商談化までの対話を想定し実践します。ロープレには3つのメリットがあります。
- 全体のトークの流れをイメージできるようになる
- 顧客の質問に臨機応変に対応できるようになる
-
自分では気付かなった課題をフィードバックによって把握し、改善できる
などです。
顧客から想定外の質問をされた際にメンバーが対応できなかったり、架電でいつも断られてしまう原因が分からなったりするときに有効な手法と言えます。
ロープレのデメリットは、何となく相手とメンバーに分かれて会話をするだけでは効果が得られないことです。すでに苦手な部分が分かっているときにはそれを重点的に行ったり、商談予定がある場合その案件を想定してロープレをおこなったりすることで、実際の架電時に活かせます。
② セミナー/勉強会
セミナーや勉強会では、インサイドセールスに必要なスキルやインサイドセールスの基礎知識、商材の知識を体系的に学べるカリキュラムが実践されます。セミナーや勉強会は外部サービスで提供しているところもあるため、社内にインサイドセールスに関するノウハウや教育体制が整っていない場合にも有効です。
セミナーや勉強会は外部サービス利用時、内製よりも費用が高くなったり、コーチ側に自社商材や業界に関する知識が不足している場合があったりといったデメリットがあります。一方、内製する場合セミナーや勉強会のためのリソースが発生したり、インサイドセールスに関する専門知識やノウハウが不足したりといったことがデメリットです。
メリットとデメリットを踏まえて内製か外部サービスを利用するかを決めましょう。
③ E-learning
E-learningではインサイドセールスに関する基礎知識のほか、コンプライアンスやハラスメント、情報セキュリティなどさまざまな分野を学べます。新人向け、スキルアップなど目的に応じたプログラムを選択できます。
E-learningのメリットは、
- 自分のペースで勉強できる
- 自分のペースで 復習ができる
- 対面式のセミナーや勉強会よりも費用が安い傾向にある
- メンバーの進捗状況を管理できる
- 学習データをノウハウとして蓄積できる
になります。3~5のように、企業側のメリットもあります。
デメリットは、自主的な勉強が必要となるためモチベーションを保ちにくい、インターネット環境のため実践的なスキルを身に付けるのが難しい、などです。E-learningではカバーできない、実践的なスキルにはロープレなどのほかの手法も併用することをおすすめします。
④ 音声解析
音声解析では、インサイドセールスでの顧客との音声データをAIが解析し、テキストデータへの変換や、通話内容の感情分析、キーワードや話題の自動抽出といったことが可能です。音声解析によって会話内容や感情の可視化が可能となり、メンバーの定量評価やクレームの原因特定、テキスト化によるスクリプトやマニュアルへの活用が期待できます。
音声解析のデメリットは、解析ツールの導入コストが発生すること、ツールによって解析精度が左右されることです。音声解析を導入する目的に合わせて、必要な機能がそろっているツールを選定する必要もあります。
⑤ 1on1
1on1では、上司にあたるインサイドセールスマネジャーまたはスーパーバイザーと、メンバーが1対1で対話をおこないます。上司と部下が直接コミュニケーションを取ることで、上司と部下に信頼関係ができる、人事評価に納得感が得られるといったメリットがあります。また、上司は部下の変化に気付きやすい、部下は仕事のモチベーションを上げられる、などの双方のメリットも得られます。
一方で1on1を実施する際に時間的な負担が大きい、1on1の効果を得るために上司側のスキルが必要といったデメリットがあります。場合によっては、インサイドセールスマネージャーやスーパーバイザーへの1on1に関する研修や勉強会の開催が必要です。
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まとめ
インサイドセールスの教育の重要性とメンバーに重要視されるスキルや、おもな教育手法を解説しました。インサイドセールスで成果を上げるためには、メンバーが必要なスキルやテクニックを取得し、組織的な能力を均一化することが重要です。インサイドセールスの組織規模が大きくなれば、その分、計画的な教育体制の構築も求められます。また、メンバーへ一度教育して終わりではなく、習得後の検証や進捗状況の確認、キャリアプランの設計といった、教育に関する戦略的な設計をおこなうことで、スキルやテクニックを効果的に習得できるようになります。
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■インサイドセールスの事例は下記でもご紹介しています。ぜひご覧ください!
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