セールスイネーブルメントと営業トレーニングとの違いとは?
営業組織の改革や強化のための取り組みとして、セールスイネーブルメントが注目されています。株式会社ブレーンバディが実施した「セールス組織に関する調査レポート」によると、全体の80%以上が「営業スキルのばらつき」「パフォーマンスの差」に課題を感じていると回答し、さらに全体の71.3%が「セールスイネーブルメント」が自社に必要だと回答しています。
セールスイネーブルメントは営業組織における教育や育成といった課題解決のために有効な取り組みです。ところが、「セールスイネーブルメントとセールストレーニングの違いが分からない」「セールスイネーブルメントに取り組みたいが、具体的に何をすればいいか分からない」といった悩みを持つ方も多いかもしれません。この記事では、セールスイネーブルメントと営業トレーニングの違いやセールスイネーブルメント実現のための手法について解説します。
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セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメントとは、営業活動において中長期的かつ継続的に成果を挙げることを目的とした、営業組織の強化や改善ための総括的な取り組みのことです。セールスイネーブルメントでは、以下のような複数の部署にまたがっておこなわれていた営業組織強化のための活動を、統合させて取り組みます。総括的に取り組みをおこなうことで、マーケティングや営業部門の連携が取りやすく、営業担当者の教育や育成施策が成果につながりやすくなるといったメリットが得られます。セールスイネーブルメントによって得られるメリットについては、次の章で詳しくお伝えします。
営業活動最適化や営業担当者のスキルアップなど、営業人材育成に関する施策もセールスイネーブルメントに含まれます。セールスイネーブルメントでは、一貫した教育の提供やトレーニング後の行動を分析することで、案件化率や成果率の上昇などの成果が期待できるでしょう。
■セールスイネーブルメントの概要や注目されている背景、取り組むメリットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。→セールスイネーブルメントとは?概念やメリットについて解説!
セールスイネーブルメントとセールストレーニングの違い
セールスイネーブルメントとセールストレーニングの主な違いは、施策が包括的かスポットかです。本章ではセールスイネーブルメントとセールストレーニングの違いを解説します。
セールスイネーブルメントの定義
セールスイネーブルメントの定義は、日本と海外では少し異なります。日本では、セールスイネーブルメントとは営業組織の強化や改善ための総括的な取り組みと定義されていますが、海外では企業や団体によって定義や解釈が異なる場合も多いです。
たとえば「混同されがちな「セールストレーニング」と「セールスイネーブルメント」の違い?」では、Building Blocks of Sales Enablement内の記述によると、海外の企業や組織によってセールスイネーブルメントの解釈が以下のように異なるとしています。
海外の企業・団体 |
セールスイネーブルメントの解釈・定義 |
Gartner |
営業チームがより効果的に活動できるよう必要なリソースを提供し、より多くの案件をクローズさせるためのプロセス |
Forrester |
売り手がスキル、知識、資産、プロセスに関する専門知識を獲得し、すべての買い手とのやりとりを最大化できるようにすることがセールスイネーブルメントの目的 |
Association for Talent Development |
買い手が辿る道のり全体を通じて継続的かつ戦略的なリソースを提供してビジネスに対するプラスの影響を創出し、市場に対応するチームの生産性を増加させることがセールスイネーブルメントの目的 |
Sales Enablement Society |
適切な営業マネジメントとパフォーマンスマネジメントのテクノロジーの活用により、組織全体の連携を強化する取り組み |
(出典:猪瀬竜馬 | Ryoma Inose note「混同されがちな「セールストレーニング」と「セールスイネーブルメント」の違い?」)
セールスイネーブルメントの定義や解釈は海外の各企業や組織で異なるものの、いずれの場合も、セールスイネーブルメントとは組織的な働きかけや、プロセス全体の最適化であることには変わりはありません。
セールストレーニングとは
トレーニングとは、技能や知識を身につけるための指導や練習のことです。スポーツや仕事、学問などさまざまな分野で必要なスキルや知識を身に付けるために実施されます。営業スキルを身に付けるために実施されるのがセールストレーニング(営業トレーニング)です。セールストレーニングでは、主に営業活動に必要なコミュニケーション能力や対話の進め方、商材の知識などを身に付けるために商談のシミュレーションなどがおこなわれます。
セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメントの目的は、営業活動で成果を出せるようになる組織や仕組みづくりです。そもそもセールスイネーブルメントのイネーブルメントとは、「~ができるようになる」「有効化する」といった意味の「enable」を名詞化した言葉であり、セールスイネーブルメントを直訳すると、営業ができるようになる、営業を有効にするとなります。セールスイネーブルメントが組織全体やプロセス全体への取り組みであることに対して、トレーニングとは営業スキルを身に付けるための指導や練習そのものを指すという違いがあります。
セールスイネーブルメントとセールストレーニングの違い
セールスイネーブルメントとトレーニングの違いは、取り組みの対象が「営業個人」か「営業組織全体」かです。
また、トレーニングと似ている言葉として使われる「人材育成」は、営業個人のスキルアップのための手法や取り組みを指します。トレーニングや人材育成はスキルアップを目的とした手法や取り組みそのものを指すため、各部門が個別におこなう、スポット的な研修を実施するなど、トレーニングや人材育成の取り組みやプログラムが一貫していないことがあります。
一方でセールスイネーブルメントは、トレーニングや人材育成を一貫しておこなうことが特徴です。営業活動の目標を設定し、目標達成のための行動の定義や行動に必要な知識やスキルを洗い出して、トレーニングや人材育成のプログラムを計画します。その後トレーニングや人材育成実施後は効果測定や検証をおこない、目標達成のためにPDCAサイクルを回すことで、営業活動における成果につながるでしょう。
セールスイネーブルメントはトレーニングや人材育成への施策もおこなうため、手法や取り組みそのものと誤解しやすいものです。営業個人へのトレーニングや人材育成といった取り組みを含めた、営業組織全体の仕組み化や最適化であることを覚えておきましょう。
セールスイネーブルメントの全体像
セールスイネーブルメントで取り組む主なアクションは2つあります。1つはパフォーマンスの評価・測定です。SFAやMAなどのツールから顧客や営業データを統合し、営業成果を出すための評価指標に沿って効果測定をおこないます。
パフォーマンスの評価・測定はこの後おこなう営業活動や各種施策の最適化のベースとなります。効果測定をおこなうSFAやMAツールは自社の商材やビジネスモデルに合うものを選ぶ、ツール導入マーケティングや営業各部門で管理しているデータを統合させる必要があるといったポイントに注意しましょう。
2つ目が営業活動および各種営業施策の最適化です。パフォーマンスの評価・測定結果を元に、営業プロセス、コンテンツ、育成、業務を自動化・効率化のための施策を最適化します。各施策を最適化することで、案件化率や成果率の向上や営業活動の効率化につなげ、営業組織の強化や改革を実現します。営業活動や施策最適化後の効果測定や評価の仕組みを作っておく、PDCAサイクルを回すようにする、といった点に注意しましょう。
この2つ のアクションを軸にセールスイネーブルメントの全体像をまとめたのが、以下の図です。
(出典:トライツコンサルティング株式会社「【2023年版】セールスイネーブルメントの全体像を徹底解説」)
セールスイネーブルメントでは、顧客や営業データからパフォーマンスの評価と測定をおこない、営業活動と各施策の最適化を継続しておこなうことで、営業成果を出し続ける組織づくりを実現します。
まとめ:セールスイネーブルメントを実現するための手法
セールスイネーブルメントに取り組むことで、実施から改善まで持続的におこなう一貫した育成施策を実現します。従来のトレーニングや人材育成では出せなかった、営業成果に直結する人材育成にもつながるでしょう。
セールスイネーブルメントを実現するための主な手法に、経験豊富な推進者を採用する、外部のコンサルタントに依頼するの2つの手法があります。具体的な手法について解説します。
経験豊富な推進者を採用する
セールスイネーブルメントの実現に有効な手法が、経験豊富な推進者の採用です。セールスイネーブルメントに取り組むためには、前述の全体像で示した通り、営業全体での成果につなげるためにパフォーマンスの評価・測定を元に各営業活動や施策の自動化、効率化をおこなう必要があります。そのためには、パフォーマンスの評価・測定のためのツールの導入、施策の自動化や効率化のためにおこなう業務や測定指標の共有、ノウハウの蓄積など、やるべきことが多くあると言えるでしょう。
すでにセールスイネーブルメントの経験を持つ人材を採用すれば、セールスイネーブルメントのスムーズな推進や浸透につながります。
外部のコンサルタントに依頼する
セールスイネーブルメントに取り組もうとしても、経験者が見つからない場合があります。セールスイネーブルメントは注目されている手法であるものの、日本で取り組みとして注目されるようになったきっかけはコロナ禍であり、つい最近でもあります。歴史が浅く実践している企業はまだまだ少ないです。そのため、セールスネーブルメントの経験者もあまりいないと言えるでしょう。
セールスイネーブルメントの経験者採用が難しく、内製化ができない場合は外部のコンサルタントに依頼する方法があります。たとえばキューアンドエーでは、セールスイネーブルメント導入に有効なSFAやMAツールの導入やデジタル基盤の構築をはじめとした、各種BtoB営業支援サービスをご提供しております。立ち上げは外部コンサルタントに依頼し、将来的にセールスイネーブルメントの内製化を目指すことも可能です。セールスイネーブルメントに関してお悩みの際には、ぜひお気軽にご相談ください。ご相談は、こちらへ。
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