リコール対応の手順は7ステップ!具体的な流れや注意点を解説
製品に欠陥が発見された場合、お客様に安全な製品を届けるためにリコールが必要となることがあります。突然のリコール対応で、「迅速に対応しなければ」「でも何をどのように進めたらよいのだろうか」と悩む人は多いでしょう。本記事ではリコール対応の手順、進め方を詳細に説明します。リコールが必要と判明したら、適切かつスムーズに対応するために、企業の担当者はぜひこの記事を参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.リコール対応の全体像とは?
- 2.ステップ1:事実確認を行い情報をまとめる
- 3.ステップ2:リコール対応の統括本部を設置する
- 3.1.【経理部門】
- 3.2.【開発部門】
- 3.3.【品質保証部門】
- 3.4.【製造部門】
- 3.5.【営業部門・お客様相談室】
- 4.ステップ3:リコールの進め方を明確にする
- 4.1.リコールの目的を共有する
- 4.2.リコールの方法を決める
- 4.3.対象製品と目標を明確にする
- 5.ステップ4:製品(商品)の回収から修理までの具体的な流れを決める
- 5.1.回収した製品の用途を決める
- 5.2.保管・修理に必要なスペースを確保する
- 5.3.担当業務を振り分け人員を確保する
- 6.ステップ5:ユーザーへの告知方法を決める
- 6.1.リコール対象者を明確にする
- 6.2.対象者に合わせた告知方法を決める
- 6.3.情報はまとめて告知する
- 7.ステップ6:関係企業にリコールの詳細を共有する
- 8.実際にリコールを行う
- 9.消費者の視点に立って適切にリコール対応をしましょう
リコール対応の全体像とは?
リコール対応の手順は7ステップに分かれています。まずは全体像を把握し、細かいステップを確認するとスムーズに理解できます。発生した被害を最小限にするためには、リコール対応を早期に、また適切に行うことが大切です。この7ステップでリコールを進めれば、滞ることなくスムーズに対応できます。以下では各ステップの具体的な進め方を解説していきます。
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ステップ1:事実確認を行い情報をまとめる
ステップ1では事故の情報をまとめ、事実確認を行います。まず、事故の原因を調べましょう。これは再発防止のためにも必要になってきます。その上で被害者への対応を迅速に行うことが重要です。被害の大きさを踏まえ、リコールを実施するか判断してください。
ステップ2:リコール対応の統括本部を設置する
日本では、リコールについて明確に定義されてはいませんが、自動車や食品などのメーカーはそれぞれリコール制度の規定を用意しています。不具合を把握してリコールが必要だと判明したら適切に行動しましょう。
リコール対応は製品の回収や修理だけではありません。ユーザーへの告知や関係する企業への連絡が必要です。国への報告もしなければなりません。自動車のリコールは国土交通省、医薬品は厚生労働省、電気製品は経済産業省に報告しましょう。食品のリコールを行う場合には令和3年6月1日から厚生労働省への届け出が義務化されました。製品事故が消費生活用製品かつ重大製品事故の場合、事故を知ったときから10日以内に消費者庁に報告します。非重大事故の場合は事故を知った日から10日を目安にNITE(製品評価技術基盤機構)に報告します。
消費者の安全を確保するためにはわかっている事実からできることをしていかなければなりません。そのために、統括本部を設置し、担当業務を明確にすることが大切です。統括本部は、最高経営責任者のもとに必要な部門を設置します。社によって組織の違いはあるでしょうが、以下の部署ごとのイメージに沿って本部を設置し、メーカーとしての対策をスムーズに進めましょう。必要に応じて部署間で協力してください。
【経理部門】
リコールにかかる費用を算出します。必要な資金を確保するためです。回収・修理費用などの資金繰りも考える必要があります。
【開発部門】
原因の究明をして代替品の準備をします。
【品質保証部門】
行政機関に報告し、外部へ原因究明の依頼をします。法務部と連携を取りながら法的責任などの確認も同時に行いましょう。
【製造部門】
リコール製品とそうでない製品を含めたスケジュールの見直しが必要です。その上で製品工程を変更したり、原因となった部品を取り替えて代替品の製造をしたりします。
【営業部門・お客様相談室】
リコール対象の顧客や取引先の対応をします。納入先や販売店に対して回収作業のとりまとめもする必要があります。
ステップ3:リコールの進め方を明確にする
リコールすることが決定したらリコールの進め方を会社全体で明確にしましょう。リコールの方法もいくつかあるのでケースバイケースで決めていくことが必要です。
リコールの目的を共有する
何のためにリコールするのか明確にし、従業員に共有します。目的が定まっていなければ、業務負担が増える従業員は納得できません。車を例にすると、「保安基準に適合しているか対象製品の安全性を再確認することで、事故部品による交通事故を未然に防ぐ」などです。
特定の部署だけでなく、組織全体が一体となって対応することがリコールの完遂に不可欠です。事業者として社会的責任を果たし、消費者を守ることを最優先に考えましょう。
リコールの方法を決める
リコールの方法は、大きく分けて3つあります。
部品の不具合や欠陥が見つかった場合には、製品を回収し修理する必要があります。誤った使い方が原因の場合、製品を継続的に使用しても安全なら回収まで行う必要はありません。返金する場合は、消費者にわかりやすいように返金方法を明確に定めることが重要です。
対象製品と目標を明確にする
対象製品の品名・型番・ロット番号などを明確にします。併せて、流通状況などの波及範囲も調査するようにしましょう。
次にリコール実施率と実施期間を決めます。もちろん実施率100%が理想ですが、消耗品など回収不可能な場合もあります。対象の製品ごとに実現可能な目標を設定しましょう。実施費用や消費者への負担を考慮すると、長期間にわたるのは好ましくありません。
ステップ4:製品(商品)の回収から修理までの具体的な流れを決める
製品の回収ができたら、その回収した製品を再利用するのか、修理するのかなどを決めなければなりません。また回収や修理、保管には多くの人員が必要になります。前もって人員を集めておきましょう。
回収した製品の用途を決める
回収した製品の中で、安全な部品は再利用したいところです。悪い部品の取り替えや修理など具体的な流れを決めていきましょう。
保管・修理に必要なスペースを確保する
回収した製品の保管スペースや修理スペースが必要です。基本的には在庫を保管するスペースを活
用します。製品とリコール品を明確に区別する必要があるので混同しないよう注意しましょう。
担当業務を振り分け人員を確保する
製品回収や修理には、人員と予算が大幅に必要になります。回収担当・修理担当・保管担当を分けるとスムーズでしょう。
イレギュラーな作業が発生する場合もあるので、マニュアルを用意しておくと安心です。人員は外部に委託する、もしくは、臨時スタッフを雇用するなどして確保しておくとよいです。
ステップ5:ユーザーへの告知方法を決める
リコールを告知したとしてもユーザーから製品を回収できなければ意味がありません。できるだけ多くのリコール対象者に知ってもらえるような告知方法を決めましょう。その上でユーザーからの問い合わせに答えるための窓口も用意しておく必要があります。
リコール対象者を明確にする
対象者によって最適な告知方法は異なるので販売店や販売経路を通じて調査します。調査する際に
はユーザーが個人なのか団体なのかや、想定される年齢・性別・使用する場所などの例をあげまし
ょう。例えば、病院で使用される医療機器の場合、医療機関に向けて告知する必要があります。
対象者に合わせた告知方法を決める
対象者が明確になっている場合、メールや電話での告知が有効です。メールは見落としがちなので、件名に「緊急」などの文字を入れたり、重要マークをつけたりするなど工夫が必要でしょう。
対象者を把握できない場合、新聞広告や自社サイト、公的施設の掲示板を利用します。新聞広告を利用すると、問い合わせが殺到するケースが多いので、コールセンターの増員など準備を整えておきましょう。
自社サイトでお知らせするだけでは、検索しないユーザーに情報を届けるのが難しいので、自社サイトはあくまで補足的に利用するくらいにとどめましょう。
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情報はまとめて告知する
製品を購入した消費者に伝えるべきリコール情報が網羅されていることが重要です。対象製品についてはもちろん、リコールの経緯や被害の状況、注意喚起などが挙げられます。今後の対応や問い合わせ先も明確にするとよいです。
ステップ6:関係企業にリコールの詳細を共有する
リコールプランが整ったら、関係企業や従業員など以下の4者にリコール情報を共有します。
・全社の従業員
・弁護士
・保険会社
・取引先の企業
全社の従業員
統括本部メンバーだけでなく、全社の従業員に情報を共有しましょう。情報がまとまった状況で共有すれば、誤った情報の流出が防げます。
弁護士
リコールには法的責任を伴う場合が多いです。法律の専門家に相談して正確な意見を求める必要があります。
保険会社
リコール保険(生産物回収費用保険)に加入していれば、費用が補償されます。保険の種類によって適用範囲や補償金額が異なるので、保険証券を参照し保険会社に確認してみましょう。
取引先の企業
リコール後の信頼回復のためにも、原因や調査の状況、今後の対応を正確に伝えましょう。
取引先を経由して、リコールに気づいていない消費者に情報共有できる場合もあります。
実際にリコールを行う
リコール計画が整い、情報共有が完了したらすぐにリコールを開始します。速やかに安全性の高い製品を提供することが重要です。企業の負担は大きくなりますが、消費者優先の対応で信頼回復に努めましょう。
リコールはこれまで立ててきた計画通りに進むとは限りません。実施状況を逐一モニタリングし、手順を改善しながら進めていくことが大切です。モニタリングすることで、リコールの方法を改善することができます。消費者からの意見は必ずしもお問い合わせ窓口に寄せられるとは限りません。販売店や自社サイトへの問い合わせ、消費者センターなどさまざまな経路から情報を集めるのがよいです。
また、複数のリコールの告知方法を設定した場合、どの方法の回収率がよかったのかも分析しましょう。
消費者の視点に立って適切にリコール対応をしましょう
本記事で紹介したリコールの対応の手順は以下の7ステップです。
それぞれの段階の手順をしっかり確認し、適切に対応することが大切になってきます。リコールはこれ以上の事故やトラブルを防止する、消費者のための制度です。問題に的確に対処することによって、製品を購入した消費者から信頼回復だけでなく、安心感も得られる可能性もあります。
リコール対応を任された担当者は本記事を参考にしてリコール対応をスムーズに行いましょう。
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