介護業界注目の人事評価制度改革:介護職員・介護士・ケアマネの離職を回避し、労働意欲を高める人事制度を導入しよう【2024年版】

現在、介護業界は日本の高齢化社会とともに拡大の一途を辿っています。需要が拡大する背後でさまざまな課題が存在し、特に人手不足は深刻な問題として顕在化しています。この人手不足の背景には、長時間労働や低賃金、精神的・肉体的な負担が大きいという介護業界のイメージが影響しています。
 
加えて、研修や教育制度の不足、キャリアアップの道が見えにくいといった点も、若手の離職率の高さにつながっているのです。この状況が続くと、介護の質の低下やサービス提供者の減少を招き、最終的に高齢者の生活の質に影響を及ぼす恐れがあります。本課題の解決策として、介護業界では「人事評価制度の導入」の必要性が高まっています。
 
本記事では、「介護業界における課題」や「人事制度導入が必要となる理由」「人事制度導入のメリット・デメリット」と、「介護業界に適した人事制度導入方法」について解説します。介護業界で人事評価制度の導入を検討中の方は、ぜひご覧ください。

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目次[非表示]

  1. 1.介護業界の現状と課題
    1. 1.1.①介護人材の需給ギャップが拡大
    2. 1.2.②給与・待遇の課題
    3. 1.3.③労働環境の過酷さ
    4. 1.4.④介護職の社会的評価の低さ
  2. 2.介護業界における人事評価制度導入の重要性
    1. 2.1.介護職員のモチベーション向上につながる
    2. 2.2.業界のスタンダード化への取り組み
  3. 3.介護業界での人事評価制度の導入メリット・デメリット
    1. 3.1.①離職率の低下につながる
    2. 3.2.②介護職員の労働意欲向上が期待できる
    3. 3.3.③社内コミュニケーション活性化につながる
    4. 3.4.④企業理念や目指すべきゴールを共有できる
  4. 4.人事評価制度導入のデメリット
    1. 4.1.①コミュニケーションコストがかかる
    2. 4.2.②業務に偏りが生じるリスクがある
    3. 4.3.③過度な競争心の芽生え
    4. 4.4.④評価基準の不明瞭さ
  5. 5.介護業界の人事評価制度の導入は「人事支援コンサルサービスの利用」がおすすめ
  6. 6.介護職員向けの人事評価制度を導入し、人材確保や企業成長に役立てよう


介護業界の現状と課題

日本の超高齢化が進む中で、介護業界では人材需要が急増しています。需要が増す一方で、介護業界には多くの課題があります。具体的な課題は以下です。



①介護人材の需給ギャップが拡大

厚生労働省のデータによれば、2025年度に必要とされる介護職員は約243万人と推定されています。2019年の介護職員数は約211万人であり、計算上では今後「約32万人の介護職員が不足する」ことになります。さらには、2040年度に約280万人の介護職員が必要と予測されています。生産年齢人口の減少を考慮すると、人材需給のギャップは今後さらに拡大し、人手不足がより深刻化していくでしょう。


②給与・待遇の課題

介護業界特有の制度上の問題として、介護保険制度による「給与の上限設定」が設けられています。一般的な企業のビジネスモデルとは異なり、介護業界では給与の上昇に制約があるため、人材確保や維持が難しい一因になっています。


③労働環境の過酷さ

介護職は多岐にわたる業務内容と、人手不足による日常業務の過酷さがあります。特に入所系の施設では夜勤が必須となるケースも多く、精神的かつ身体的な負担が大きいのが実情です。


④介護職の社会的評価の低さ

介護業界の社会的評価は他の専門職と比べて低く見えてしまい、業界の魅力を低下させている要因の一つとなっています。特に資格制度の違いから、医師や看護師と比較すると介護職が不利になってしまっている部分があります。


介護業界における人事評価制度導入の重要性

業界全体が抱える課題を背景に、介護業界で人事評価制度導入の重要性が高まっています。理由として、以下の2つが挙げられます。



介護職員のモチベーション向上につながる

公正な評価と待遇は介護職員のやる気を引き出す要因となり、その結果、業績向上が期待できます。さらに、介護職員の自発的な取り組みが人材育成にも寄与します。人事評価制度の導入により、介護事業所や施設で「明らかな効果」を感じている事業者が増えています。明確な評価制度により、介護の質を向上させることにつながるでしょう。
 
大手の介護事業所や施設では人事制度の導入が進んでいますが、中小規模ではまだまだ導入が進んでいないのが現状です。しかし、規模が小さく人材が限られている中小の事業所や施設ほど、人材の確保やモチベーション向上が急務の課題となっています。充実した環境は人材の定着を促進し、採用の際にも人事評価制度の存在は大きな魅力となります。人事評価制度の導入は、より多くの人材を引き寄せる要因となるでしょう。


業界のスタンダード化への取り組み

会社が成長するにつれ、ステークホルダーの期待は増大し、それに応えるためのアプローチが求められます。介護業界でも、企業価値の向上や不正予防の観点から、人事評価制度を含む「コーポレートガバナンス強化の取り組み」が必要です。ガバナンス強化の取り組みの第一歩として、「社内ルールの確立」と「明確化」が挙げられます。
 
これらが未整備の場合、労働基準法違反や安全衛生法違反、情報セキュリティの未確立などのリスクが生じる可能性があります。特に人事評価制度は多くの企業が活用しており、社員や職員の業績や能力を的確に評価し、その結果を給与や昇進、配置へと反映させる重要な仕組みです。社会的信用を守りながら企業として成長していくために、適切な人事評価制度の導入は不可欠といえるでしょう。


介護業界での人事評価制度の導入メリット・デメリット

人事評価制度の導入は、企業と介護職員の双方に深く関わるテーマです。介護業界で人事制度を導入するメリットは以下の通りです。


①離職率の低下につながる

日本社会が直面している少子高齢化の影響は、多くの企業で「人材不足」という形で顕在化しています。人材不足が進む中で、「人事評価制度の確立」は企業活動を維持するための支えとなります。介護職員が企業理念をしっかりと把握し、その上で成果を上げることが評価される人事制度によって、新たな挑戦を受け入れる意欲が湧きます。自らの評価に関する納得感が得られることで、離職率の低下につながるでしょう


②介護職員の労働意欲向上が期待できる

従来の年功序列のような古い評価基準とは異なり、人事評価制度は介護職員の能力や成果を前面に評価するものです。そのため年齢や社歴にとらわれず、公平に評価されるチャンスが増え、介護職員の労働意欲の向上を後押しします。


③社内コミュニケーション活性化につながる

人事評価制度は、単に成果の数字だけを追うものではありません。上司と介護職員の対話機会が増え、介護職員の意欲や企業理念への理解、目標に対する姿勢などを深く知ることができます。この対話の過程で、上司からは適切な指導やアドバイスをおこなえ、介護職員からは企業理念との一致を確認することができます。このような深いコミュニケーションは、企業全体の結束力を高める要因となります。


④企業理念や目指すべきゴールを共有できる

人事評価制度は、「企業目的との一致」を重要な評価軸としています。そのため、介護職員は企業のビジョンや理念を常に意識する必要があります。人事評価制度が導入されることで、介護職員全体が「企業の目指す方向性」に合致した行動を取ることが期待できます。


人事評価制度導入のデメリット

人事評価制度を導入するメリットがある一方で、デメリットも無視できません。人事評価制度導入によるデメリットは以下の通りです。


①コミュニケーションコストがかかる

人事評価制度の導入は企業成長に貢献しますが、同時にコミュニケーションの回数や深度が増すため「コミュニケーションコスト」が増大します。業務の繁忙期に目標設定や評価面談のタイミングが重なると、介護職員と上司の双方の負担が増してしまうため、適切な運用方法を模索する必要があります。


②業務に偏りが生じるリスクがある

人事評価制度に基づき「特定の業務の成果」を高く評価することが明示されている場合、介護職員はその部分に注力し、他の重要な業務や取り組みを軽視する可能性があります。このような偏りは、組織のバランスを崩す原因になる可能性があるため注意が必要です。


③過度な競争心の芽生え

正しい評価軸を設定しないと、介護職員間で「過度な競争心」が生まれる可能性があります。この競争が健全なものであれば良いですが、場合によっては、チームワークの低下や内部の対立を生むリスクも考えられます。


④評価基準の不明瞭さ

人事評価制度の評価基準が不明瞭であると、介護職員の混乱や不満が生じる可能性が高まります。評価制度を公正かつ透明に運用するためには、評価基準を明確にし、それを介護職員全員に伝えて理解してもらう必要があります。


介護業界の人事評価制度の導入は「人事支援コンサルサービスの利用」がおすすめ



介護の現場で人事評価制度を新たに導入し、従来の運用から脱却したいものの「知識が乏しくて導入方法が分からない」「人事評価制度の適切な設計や運用が難しい」などの課題もあるでしょう。また人事評価制度を導入する場合、労働基準監督署への提出手続きが必要になるため、すべてを社内だけでおこなうのは困難といえます。
 
解決策として、各社の実態に応じて制度や規程を導入可能な「外部コンサルティングサービス」を活用することがおすすめです。ノウハウを持つ専門コンサルに依頼することで、法定対応や規程整備の支援を請けながら「自社に適した人事評価制度」を導入することが可能です。


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介護職員向けの人事評価制度を導入し、人材確保や企業成長に役立てよう

「自分の仕事」や「仕事に対するスキルや能力」が公平かつ適切に評価されることは、介護事業所や施設で働く介護職員のやりがいにつながり、介護サービスの質を向上させます。また、人事評価が適切におこなわれている介護事業所や施設は、人材採用の際に魅力的な職場として強みを持ち、新たに採用した介護職員の定着率も上がります。

人事評価制度の導入は多くのメリットをもたらしますが、一方でデメリットやリスクも無視できません。人事評価制度の導入を成功させるには、最適な評価基準や運用方法、評価制度の継続的な見直しが必要なため、外部の専門家に任せるのが良いでしょう。特に介護業界では、介護保険をはじめとした各種制度に精通した専門家のサポートが必要です。

キューアンドエーは、介護業界の人事機能における「労政分野の最適化や効率化」を実現する「人事制度まるごとアシスト」サービスを提供しています。 現状把握から実態に応じた運用設計、ツールの提案など、お客様が自律的に人事評価制度を運用できるようワンストップで支援します。お客様の既存メンバーと共にノウハウを蓄積して、最適な人事評価制度を導入し、運用を成功に導きます。
 
スモールスタートで始めやすいように、対応範囲や実施期間によってさまざまなプランを用意しています。まずは最小プランで始めてみて、状況を見ながら延長や拡大も可能です。介護業界で人事制度を導入したい方は、ぜひキューアンドエーにご相談ください。キューアンドエーがお客様に寄り添い、最適な人事評価制度の導入と運用定着を支援します。ぜひ、お気軽にご相談ください


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キューアンドエー株式会社   坂倉 秀太
キューアンドエー株式会社   坂倉 秀太
複数のコンタクトセンター責任者を経て、キューアンドエーに2018年中途入社。 ICT(「情報通信技術」)に特化したコンタクトセンターとオンサイトサポートをメインに、大手クライアントのインサイドセールスプロジェクト責任者としてデジタル基盤から体制までを一から立ち上げる。 中期計画にて自社事業、提供サービスの展望を望み、 セールス領域で他企業と差別化できるデジタルマーケティング、 インサイドセールス確立を見据えプロジェクトを推進している。