中小企業の人事評価制度とは?導入率や作り方、人事課題などを紹介
中小企業の経営者や人事担当者にとって、従業員の定着やパフォーマンス向上に向けた取り組みをどのように進めるべきか悩みを抱える方も多いでしょう。その答えの一つとして、人事評価制度が注目されています。
本記事では、中小企業における人事評価制度の実態や必要性、導入のタイミングや方法などを詳しく紹介します。人事評価制度を見直そうと考えている方、導入を検討している方にとって、お役に立てば幸いです。
目次[非表示]
- 1.人事評価制度とは?
- 1.1.人事評価制度の概要
- 1.2.人事評価制度の目的
- 1.2.1.①パフォーマンスの向上
- 1.2.2.②公平な評価
- 1.2.3.③経営方針の浸透
- 2.中小企業における人事評価制度の実態
- 3.中小企業で人事評価制度が必要な理由
- 3.1.①一人ひとりのパフォーマンスを上げるため
- 3.2.②社員の定着率を上げるため
- 3.3.③コミュニケーション活性化のため
- 4.中小企業が人事評価制度の導入で解消できる課題
- 4.1.①人手不足の解消
- 4.2.②評価者の違いによる不公平感の抑制
- 4.3.③人事評価にかかる時間の短縮
- 4.4.④社内での人材育成
- 5.中小企業が人事評価制度を導入・整備すべきタイミング
- 5.1.①企業規模の拡大
- 5.2.②組織変革や方針の転換
- 5.3.③採用基準の策定・見直し
- 6.中小企業が人事評価制度を導入・整備する方法
- 6.1.自社で制度を設計する
- 6.2.専門のコンサルティング業者に依頼する
- 7.まとめ
人事評価制度とは?
人事評価制度は、企業の成長や従業員のモチベーション向上に重要な役割を担います。しかし、具体的にどのような制度なのか。また、どういった目的でおこなわれるものなのでしょうか。ここでは人事評価制度の概要とその目的について詳しく解説します。
人事評価制度の概要
人事評価制度とは、従業員の業務遂行能力や態度、成果などを定期的に評価し、その結果をもとに賃金や昇進、教育・研修の方針などを決定する制度を指します。具体的には、目標設定、中間評価、年次評価などのステップを経て、従業員のパフォーマンスを評価することが一般的です。
人事評価制度の目的
人事評価制度の主な目的は、以下の3点に集約されます。
①パフォーマンスの向上
従業員が自らの業績や課題を認識し、向上意欲を持つことを促します。定期的なフィードバックを通じて、従業員の自己認識とマネージャーの評価を一致させることで、成果の最大化が可能です。
②公平な評価
すべての従業員が平等に評価され、報酬や昇進の機会が公平に与えられるようにします。明確な評価基準と評価プロセスを設定することで、部門や評価者間の偏見を排除し、公正な評価を実現します
③経営方針の浸透
企業の経営方針や目標を従業員に明確に伝え、組織全体としての方向性を共有します。評価制度を通じて、経営層の意向や戦略が現場まで浸透し、組織全体が一体となって目標に向かうことが可能です。
中小企業における人事評価制度の実態
中小企業における人事評価制度の導入状況は、大手企業と比較してまだ浸透していないのが現状です。株式会社帝国データバンクが実施した「中小企業の経営力及び組織に関する調査研究」によると、従業員5〜20人の企業では、人事評価制度があるのは35%であることに対し、100人を越える企業では87.2%が導入しており、企業規模に比例することがわかります。
(出典:中小企業の経営力及び組織に関する調査研究|株式会社帝国データバンク)
中小企業ではリソース(専門知識、人材など)が限られているため、制度の導入や運用にまで手が回らないことが考えられます。また、社員数が少なければ、従業員一人ひとりに目が行き届くため、人事評価制度の必要性を感じられていないことも想定されます。
しかし、状況を把握していることと、適切な評価ができていることは似て非なるものです。導入している中小企業では、明確な評価基準やフィードバックの機会を通じて、従業員のモチベーション向上や業績の向上を実感しています。
同調査によると、人事評価制度の有無別に売上高の増加率を調べたところ、どの企業規模でも人事評価制度を導入した企業は、導入していない企業に比べて売上増加率が高いことがわかりました。ここからわかるように、企業にとって人事評価制度は組織の成長に欠かせないものだといえるでしょう。
(出典:中小企業の経営力及び組織に関する調査研究|株式会社帝国データバンク)
中小企業で人事評価制度が必要な理由
中小企業において、人事評価制度は単なる「評価」を超えた多様な役割を果たしています。特に、中小企業の特性や課題を考慮すると、人事評価制度の導入は経営の持続性や成長を支える重要な要素です。ここでは、中小企業において人事評価制度が必要である、具体的な理由やその背景を詳しく探っていきましょう。
①一人ひとりのパフォーマンスを上げるため
中小企業は大企業と比較して社員数が限られているため、一人ひとりのパフォーマンスが組織全体の業績に大きく影響します。人事評価制度を通じて、社員の強みや成果を明確にし、それを伸ばす方向へのサポートやフィードバックをおこなうことで、社員のやる気やモチベーションを引き出せます。これにより、社員のポテンシャルを最大限に活かす「少数精鋭」の組織づくりを目指せるでしょう。
②社員の定着率を上げるため
企業経営において人材の退職は大きなリスクを伴います。とりわけ中小企業では、新しい人材の採用にコストがかかるだけでなく、組織への適応や業務の習熟にも時間が必要です。
人事評価制度を通じて、社員の業績や貢献を適切に評価し、それを給与や昇進、昇格などの処遇に反映することで、社員の定着率を向上させることが期待できます。また、採用コストの削減という経済的なメリットも得られるでしょう。
③コミュニケーション活性化のため
人事評価制度は、組織内のコミュニケーションを活性化させる手段としても機能します。評価の過程で上司や部下、同僚間でのフィードバックや意見交換がおこなわれることで、お互いの認識のズレを解消し、より良い業績を目指すための共通の理解を深めることができるでしょう。特に中小企業では、社員同士の距離が近いため、このようなコミュニケーションの場を設けることで、組織の一体感や連携を強化する効果も期待できます。
中小企業が人事評価制度の導入で解消できる課題
中小企業が直面する多くの課題は、人事評価制度の導入によって劇的に改善される可能性があります。人事評価制度は、企業の成長と持続的な成功をサポートするための鍵となる要素を提供します。ここでは、中小企業が人事評価制度を導入することで具体的にどのような課題を解消できるのか見ていきましょう。
①人手不足の解消
中小企業の多くは人手不足という課題に直面していますが、人事評価制度を導入することで離職率の低下が期待できます。なぜなら、従業員が自分の業績や成果を正確に評価されることで、従業員のモチベーションや職場への帰属意識が高まるためです。
また、評価結果を基にしたフィードバックや研修の提供により、スキルアップの機会を得ることができるため、長期的なキャリアの展望が見えるようになるでしょう。これにより、従業員の定着率が向上し、新たな採用活動の頻度やコストの削減が可能となります。
②評価者の違いによる不公平感の抑制
統一された評価基準の導入は、異なる評価者間での評価のばらつきを最小限に抑えることができます。とりわけ中小企業では、評価者の主観や経験による評価の差が生じやすいため、この問題は特に重要です。
従業員が公平に評価されていると感じることで、モチベーションの低下や不満の蓄積を抑えられるでしょう。また、公正な評価制度は、社員間の信頼関係を強化し、チームワークの向上にも寄与します。
③人事評価にかかる時間の短縮
効率的な人事評価制度を導入することで、評価プロセスの時間を大幅に短縮できます。特に中小企業では、限られた人材やリソースを有効に活用することが求められます。
明確な評価基準や評価ツールの導入により、マネージャーや人事担当者の業務負担が軽減され、他の重要な業務に専念することが可能です。
④社内での人材育成
人事評価制度は、従業員の強みや弱点を明確にするためのツールとして活用できます。評価結果を基に、個別の育成プランや研修プログラムを策定することで、社内での人材育成を促進できます。
中小企業では、外部からの人材獲得が難しい場合が多いため、社内での人材の成長をサポートすることが、企業の競争力を維持・向上させるための鍵となるでしょう。
中小企業が人事評価制度を導入・整備すべきタイミング
人事評価制度は、企業の成長や変革をサポートする強力なツールとなり得ます。しかし、制度の導入を成功させるには、タイミングを見極めることが大切です。適切なタイミングでの導入は、組織の活性化や業績の向上、社員のモチベーションアップに繋がります。
逆に、タイミングを逸してしまうと、その効果は十分に得られません。それでは、中小企業が人事評価制度を導入・整備すべき最適なタイミングとは、いつが最適なのでしょうか?ここでは、中小企業が人事評価制度を導入・整備すべきタイミングを3つ解説します。
①企業規模の拡大
企業が急速に成長し、社員数が増加すると、組織内での業績や能力のばらつきが顕著になります。このような状況では、一貫した評価基準が必要となり、人事評価制度の導入が求められるようになります。
中小企業では、一人ひとりの社員のパフォーマンスが企業全体の業績に直結するため、公平かつ適切な評価が不可欠です。たとえば、社員数が50人を超え、各部門やチーム間での業績の差が生じた場合は、組織全体の方向性を一致させるために導入を検討すると良いでしょう。
②組織変革や方針の転換
企業の経営環境や市場の変化、新しいビジョンの策定など、組織の大きな変革や方針転換がおこなわれる際は、現行の評価制度が新しい方針や目標に合致しているかの見直しが必要です。このようなタイミングで、人事評価制度を導入または改善することで、変革を成功させるための人材マネジメントが可能となります。
たとえば、新しい事業領域への進出や、大規模な組織再編をおこなった際に、それに伴う新しい役割や責任を明確にするための評価基準の見直しをおこなうことが考えられます。
③採用基準の策定・見直し
企業が新しい人材を採用する際、求める人材像や必要なスキル、経験などの基準を明確にすることが重要です。この採用基準は、企業のビジョンや経営方針、業界の変化などに応じて定期的に見直す必要があります。
人事評価制度の導入や見直しをおこなうことで、採用基準と評価基準を一致させ、新しい人材がパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を整えることができます。例えば、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を目指す企業では、ITスキルやデジタル領域での経験を重視した採用基準を策定し、それに合わせて人事評価制度も更新することが考えられるでしょう。
中小企業が人事評価制度を導入・整備する方法
中小企業が人事評価制度を導入する際、どの方法を選択するかは非常に重要です。主な方法としては、「自社で制度を設計する方法」「専門のコンサルティング業者に依頼する方法」の2つがあります。
それぞれメリット・デメリットがあるため、特性を正しく理解することが大切です。どちらの方法を選択するにしても、自社のニーズや状況に合わせて最適な選択をしましょう。
自社で制度を設計する
自社で人事評価制度を設計するアプローチは、企業の独自の文化や価値観を反映させた場合に有効です。この方法を選択することで、企業の特色やニーズに合わせた評価基準やフィードバックの方法を策定できます。
メリット
- オリジナルの制度:企業の文化や価値観、ビジョンを完全に反映させた制度を作成可能。
- コストの抑制:外部のコンサルティング業者を利用するよりも初期コストを抑えることができる。
- 柔軟性:随時、制度の見直しや改善をおこなうことが容易。
デメリット
- 専門知識が必要:人事評価制度の設計には専門的な知識や経験が求められる。
- 設計に時間が掛かる:初回の制度設計には時間がかかる可能性がある。また、評価基準に迷いが生じる。
専門のコンサルティング業者に依頼する
専門のコンサルティング業者に人事評価制度の導入や見直しを依頼する方法は、特に初めての導入や、専門的な知識が不足している場合に有効です。多くの企業の導入事例やノウハウを持つ業者は、効率的な制度設計や運用のサポートを提供してくれます。
メリット
効率的な制度設計:多くの導入事例やノウハウを基に、効率的な制度設計が可能。
- 全面的なサポート:導入から運用までの一貫したサポートを受けることができる。
- 制度の品質向上:専門家のアドバイスにより、制度の品質や適切性が高まる。
デメリット
- コスト: 専門業者のサービスを利用するため、それなりのコストがかかることがある。
- 外部依存:外部の業者に依存する形となるため、自社の特色を出しにくいことがある。
- コミュニケーションの必要性:業者との連携やコミュニケーションが必要となる。
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まとめ
本記事では、人事評価制度の意義や必要性、中小企業における導入の実態、そして導入・整備の方法やタイミングについて詳しく解説しました。
中小企業において人事評価制度の導入は、企業の成長や変革をサポートするための重要なステップです。特に、中小企業が直面する人材の課題やコミュニケーションの活性化など、人事評価制度は経営課題の解消に大きく貢献します。
中小企業の経営者や人事担当者にとって、人事評価制度は単なる「評価」のツールではなく、組織の活性化や社員のモチベーション向上、そして企業の持続的な成長をサポートするための重要な戦略の一部です。適切なタイミングと方法での導入・整備をおこなうことで、中小企業も大企業に負けない強固な組織を築くことができるでしょう。
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