コンタクトセンターのテレワーク導入は必要?メリットや必要な環境について解説

近年、テレワークの導入が多くの業界で進んでいますが、コンタクトセンター業界では特にその必要性が高まっています。一方、コンタクトセンターでは、人材不足や災害時の事業継続計画(BCP)の必要性など課題があるため、「テレワーク導入が進まない」とお悩みの方も多いでしょう。そこで本記事では、コンタクトセンターのテレワーク化のメリットと必要な環境について詳しく解説します。

テレワークの導入は、人材の幅広い確保やコスト削減、業務効率の向上など、多くのメリットがあるため、コンタクトセンター事業を展開している企業にとって重要な戦略となります。
特に、新型コロナウイルスの影響により人々のライフスタイルが大きく変化し、働き方の多様性が一層求められています。本記事の最後には、テレワークを導入するための具体的なステップも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.コンタクトセンターのテレワーク化が必要な理由
    1. 1.1.① 人材確保
    2. 1.2.②  BCP対策(事業継続計画 )
  2. 2.コンタクトセンターをテレワーク化するメリット
    1. 2.1.①人材の確保がしやすくなる(採用コストを削減できる)
    2. 2.2.②運用コストを削減できる
    3. 2.3.③業務効率化につながる
    4. 2.4.④安定した運営
  3. 3.コンタクトセンターのテレワーク化の現状
  4. 4.コンタクトセンターのテレワーク化が難しい・できないと言われる理由
    1. 4.1.課題①テレワークに特化したセキュリティ対策が必要となる
    2. 4.2.課題②オペレーターの管理が煩雑になる
    3. 4.3.課題③サービス品質が低下するリスク
    4. 4.4.課題④回線の品質が低下するリスク
  5. 5.コンタクトセンターのテレワーク化に必要なもの
    1. 5.1.① 必要なシステムやツールの導入
    2. 5.2.② セキュリティ体制の整備
    3. 5.3.③ サービス品質を向上できる環境
    4. 5.4.④ オペレーターのマネジメントができる仕組みづくり
  6. 6.コンタクトセンターでテレワークを導入する4つのステップ
    1. 6.1.①テレワーク環境の構築
    2. 6.2.②オンラインで業務をするためのマニュアルや運用ルールの作成
    3. 6.3.③管理者・オペレーターへのトレーニング
    4. 6.4.④スモールスタート
  7. 7.まとめ

コンタクトセンターのテレワーク化が必要な理由

コンタクトセンター業界では、人材不足が長らく深刻な経営課題として取りざたされています。この問題に対処するため、テレワークの導入は有効な戦略の一つです。ここでは、コンタクトセンターのテレワークが必要な理由を解説します。



① 人材確保

コンタクトセンター運営において、オペレーターの確保は最重要課題です。しかし、人材不足は業界全体で顕著な問題となっており、優秀なオペレーターの確保は一層厳しさを増しています。
テレワークを導入することで、通勤時間や距離の制約がなくなり、より広い範囲から人材を集めることが可能です。人材の多様性を高めることで、スタッフの定着率やエンゲージメント(帰属意識)が向上し、結果としてコンタクトセンターのサービス品質向上にもつながります


②  BCP対策(事業継続計画 )

BCP(Business Continuity Plan)とは「事業継続計画」のことで、災害や緊急事態が発生した際に、企業活動を継続するための計画を指します。世界中で流行した新型コロナウイルスは、多くの企業にとってBCPの重要性を再認識させる出来事でした。
テレワークの導入は、このような不測の事態においてもオペレーションを継続できる柔軟性を企業にもたらします
。従業員がオフィスに出勤できない状況でも、自宅や安全な場所から業務をおこなうことができるため、事業の継続性を保つ上で極めて有効な手段といえるでしょう。


コンタクトセンターをテレワーク化するメリット

テレワークの導入は、コンタクトセンター業界において多くのメリットをもたらします。特に現代の労働市場において、テレワークの導入が企業経営の鍵を握るといっても過言ではありません。ここでは、センターをテレワーク化するメリットを詳しく解説します。



①人材の確保がしやすくなる(採用コストを削減できる)

テレワークを導入することで、多様な人材を確保できるようになります。例えば、子育て中の方や自宅が遠い方など、通勤が難しい方も在宅で仕事ができるようになります。
働く意欲があっても、働く時間や場所に制約がある方も少なくありません。テレワーク環境を提供することで、ワークライフバランスを保つことができ、従業員満足度が向上します。結果としてオペレーターの定着率や採用率が向上し、採用コストの削減にもつながるでしょう。


②運用コストを削減できる

コンタクトセンターのテレワーク化を実現することで、オフィススペースが縮小し、オフィス賃料や水道光熱費などの固定費の削減につながります。さらに、オペレーターの通勤に伴う交通費の支出もなくなるため、運用コストの大幅な削減を実現します。


③業務効率化につながる

テレワークでは、オペレーターが自分の好みに合わせて作業環境をカスタマイズできるため、快適な環境で集中して業務に取り組むことができます。
通勤に伴う時間やストレスもなくなるため、心身ともに余裕が生まれるでしょう。これにより、パフォーマンスの最大化が期待でき、業務効率の向上につながります。


④安定した運営

コンタクトセンターのテレワーク化はBCP(事業継続計画)の観点からも重要です。今後、いつ自然災害や感染症が流行するかは誰にもわかりません。
そうした予期せぬ事態が発生した際にも、オペレーターが自宅から業務を継続できるため、サービスの中断を防ぎ、企業運営の安定性を高めることができます


コンタクトセンターのテレワーク化の現状

コンタクトセンターのテレワーク化は、普及の度合いに未だばらつきがあります。一般社団法人日本コールセンター協会がおこなった「2023年度 コールセンター企業 実態調査」によると、在宅コミュニケーターを採用していると回答した企業は、2021年度が31.7%であったことに対し、2023年度は48.4%と着実に増加しているものの、過半数に満たない状況です
また、在宅コミュニケーターを採用する予定はないと回答した企業は、2021年度が31.7%であったことに対し、2023年度は35.9%と増加しています。したがって、企業によってテレワークの導入に対して、温度差が生じていることがわかります。


(出典:2023年度 コールセンター企業 実態調査(一般社団法人日本コールセンター協会))

同調査によれば、既にテレワークを導入している企業が、在宅コミュニケーターを採用した理由として、「働き方の多様化」「BCP対策」「人材採用」を挙げていることがわかります。


(出典:2023年度 コールセンター企業 実態調査(一般社団法人日本コールセンター協会))


一方、在宅コミュニケーターを採用する予定がないとした理由では、「セキュリティ上の問題」「マネジメントの負担」「労務管理上の問題」が上位を占めています。

こうしたことからも、コンタクトセンターのテレワーク化がもたらすメリットは理解していつつも、現実的には導入に踏み切れないと判断している企業が多いことがわかります。



(出典:2023年度 コールセンター企業 実態調査(一般社団法人日本コールセンター協会))


コンタクトセンターのテレワーク化が難しい・できないと言われる理由

コロナ禍以降、オフィスワーカーを中心にテレワーク化が進む一方、コンタクトセンター業界においてはテレワークの導入を阻む課題があります。ここでは、コンタクトセンターのテレワーク化が難しい(できない)と言われる理由を詳しく見ていきましょう。


課題①テレワークに特化したセキュリティ対策が必要となる

コンタクトセンターの業務では、顧客の個人情報を含む機密データの取り扱いが日常的におこなわれるため、セキュリティ対策は必須です。一方、テレワーク環境では、これらの機密情報が外部の脅威にさらされるリスクが高まります
そのため、テレワークに特化したセキュリティ対策を講じることが欠かせません。具体的には、強固なVPNの使用、多要素認証の導入、エンドポイントのセキュリティ強化などが挙げられますが、対策に手が回らないことがテレワークの導入が進まない理由の一つといえます。


課題②オペレーターの管理が煩雑になる

オペレーターを遠隔で管理することは、オフィスでの管理と比べて複雑で困難です。例えば、メッセージチャットのやり取りでは、コミュニケーションの遅れや誤解が生じやすくなります。
オフィスにいれば業務の進捗状況や勤務態度も監視できますが、一人ひとりが異なる場所で働くようになれば現実的に不可能になります。さらに、顔が見えないだけに従業員のモチベーションや健康状態を適切に把握することも難しくなるため、マネジメントの負担増加からテレワーク化に踏み切れない企業も少なくありません。


課題③サービス品質が低下するリスク

テレワーク化によりサービス品質の低下を懸念する声も少なくありません。特に、テレワーク環境ではオペレーターが対応に困った際に、スーパーバイザー(SV)への相談や、他のメンバーからアドバイスを受けにくくなります
その結果、問題解決までの時間が長引いたり、小さな不満やトラブルが見過ごされたりする可能性があります。


課題④回線の品質が低下するリスク

テレワークでは、オペレーターが自宅環境で業務をおこなうため、回線の品質が低下するおそれがあります
自宅のインターネット回線速度が不十分で、安定性に欠ける環境では、通話品質が低下したり、システムへのアクセスが不安定になったりすることが懸念されます。その結果、顧客満足度の低下につながるリスクもあるため、テレワーク化をためらう企業も多いでしょう。


コンタクトセンターのテレワーク化に必要なもの

コンタクトセンターのテレワーク化を成功させるには、専用コールセンターシステムの導入、セキュリティ体制の整備、サービス品質を維持・向上させる環境、そしてオペレーターの効果的なマネジメントが欠かせません。ここではコンタクトセンターのテレワーク化に必要なものを詳しく解説します。



① 必要なシステムやツールの導入

テレワークを実施するにあたって、適切なシステムやツールの導入は業務の効率化と円滑なコミュニケーションを保つ上で必須です。オペレーターが自宅で同じレベルのサービスを提供するためには、CRM(顧客関係管理)システムやデータベースへの安全なアクセス、効果的なコール管理システムの構築が求められます。
例えば、クラウドベースのCRMツールを使用することで、オペレーターはどこからでも顧客情報にアクセスし、更新することができます。したがって、テレワーク化を進めるには、専用のシステムやツールの導入が不可欠です。


② セキュリティ体制の整備

セキュリティ体制の整備は、テレワーク環境における顧客情報の保護と企業の信頼性を維持するために重要です。特にリモートワークでは、データ漏洩のリスクが高まるため、強固なセキュリティプロトコルと従業員のセキュリティ意識の向上が求められます
例えば、VPNの導入やエンドポイントセキュリティの強化、定期的なセキュリティトレーニングを実施することが挙げられます。これらの措置により、テレワークにおいても堅牢なセキュリティ体制を構築することが可能です。


③ サービス品質を向上できる環境

快適な作業環境の構築は、サービス品質の維持・向上や顧客満足度を高めるために欠かせません。テレワークにおいても、オペレーターが業務に集中できる環境を整えることで、自然とパフォーマンスが向上します
例えば、適切なハードウェアの提供、高速なインターネット接続、騒音を抑えるためのヘッドセットなどが挙げられます。したがって、サービス品質を向上させるためにも設備投資を惜しまず、テレワークに最適な環境を整備することが大切です。


④ オペレーターのマネジメントができる仕組みづくり

適切なマネジメントは、オペレーターの業務生産性を保つために重要です。オペレーターの業務進捗を常に把握し、必要に応じてサポートを提供する体制が整っていなければ、サービス品質の低下やオペレーターのモチベーション低下をもたらす恐れがあります。
テレワークにおいては、パフォーマンス管理ツールの導入や定期的なオンラインミーティングを通じて、オペレーターのモチベーションを維持し、問題が発生した際には迅速に対応できるようにします。


コンタクトセンターでテレワークを導入する4つのステップ

コンタクトセンターにおいてテレワークを導入する際には、計画的かつ段階的なアプローチが必要です。ここでは、コンタクトセンターがテレワークを導入する4つのステップを詳しく解説します。



①テレワーク環境の構築

テレワーク環境の構築は、コンタクトセンターのリモートワーク移行における最初の重要なステップです。単に在宅勤務に切り替えるだけでは、オペレーターは効率的に業務を遂行することができません。
具体的には、安定したインターネット接続、適切なハードウェアとソフトウェア、そしてセキュアなアクセスを提供するVPNなどが必要です。また、打ち合わせに使用するオンラインミーティングツールや、勤怠管理システムなどを導入しましょう。オペレーターにとって快適な業務環境を整えることで、パフォーマンスが発揮されます。


②オンラインで業務をするためのマニュアルや運用ルールの作成

テレワークでは基本的にオンラインで業務を完結するため、明確なマニュアルと運用ルールが必要です。特にリモートワークは、勤務状況をリアルタイムに監視できないため、オペレーターが実際にどのように業務を進めているかが不透明になりがちです。
明確なマニュアルや運用ルールを作成することで、オペレーターが自宅で作業をおこなう際にも、業務の一貫性と品質を保つことができます。例えば、リモートワークにおける就業ルール、情報管理のガイドライン、業務報告の手順、評価基準などを文書化します。
このようにマニュアルとルールを作成することで、業務の透明性と効率性を高めることができます。


③管理者・オペレーターへのトレーニング

管理者とオペレーターへの適切なトレーニングは、テレワークの効果を最大化するために不可欠です。テレワーク時の注意点やマネジメント方法を学習することで、リモートワークにおける新しいツールやプロセスに対する理解を深め、適応を促進します。
例えば、オンライントレーニングセッションやワークショップを通じて、リモートワークに関連するスキルや知識を提供します。コンタクトセンターのテレワークは、これまでにない新しい働き方だけに、今までの価値観や考え方をアップデートすることが大切です。


④スモールスタート

テレワーク導入後の失敗リスクを減らすためには、小さく始めて徐々に拡大していくスモールスタートが有効です。小規模から開始して、万が一プロセスやシステムに問題があれば、大きな影響を及ぼす前に修正を加えることができます。
例えば、一部のチームや部署でテレワークを試行し、経験やノウハウを積みながら徐々に他の部署へと展開していきます。このように段階的な運用によって、無理なくテレワーク化を進めることが可能です。


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まとめ

コンタクトセンターのテレワーク化は、人材の幅広い確保、コスト削減、業務効率の向上など、様々なメリットがあります。しかし、その一方でセキュリティの強化、運用管理の複雑化、サービス品質の維持といった課題もあり、導入にためらう事業者も多いでしょう。
これらの課題を克服するためにはシステムの導入や適切な教育が鍵を握ります。テレワーク導入のプロセスは、環境構築から始まり、マニュアル作成、教育、そして小規模な試行を経て段階的に進めることが大切です。
新型コロナウイルスの流行によって加速されたテレワークの普及は、コンタクトセンター業界においても新たな働き方の標準を形成しつつあります。適切に計画され、実施されたテレワークは、企業にとって大きな価値をもたらすことが期待されますので、ぜひ検討してみてください。
もし、「テレワークを前向きに検討してはいるものの、具体的にどのように進めればよいかわからない・・・」といったお悩みをお持ちでしたら、当社キューアンドエーにご相談ください



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キューアンドエー株式会社   坂倉 秀太
キューアンドエー株式会社   坂倉 秀太
複数のコンタクトセンター責任者を経て、キューアンドエーに2018年中途入社。 ICT(「情報通信技術」)に特化したコンタクトセンターとオンサイトサポートをメインに、大手クライアントのインサイドセールスプロジェクト責任者としてデジタル基盤から体制までを一から立ち上げる。 中期計画にて自社事業、提供サービスの展望を望み、 セールス領域で他企業と差別化できるデジタルマーケティング、 インサイドセールス確立を見据えプロジェクトを推進している。