コールセンターのKPIまとめ|役割から設定するKPI
「コールセンター運営に必要なKPIには何がある?」「KPIの役割や計算方法を知りたい!」このようにコールセンターのKPI設定にお悩みではありませんか。
組織やチーム運営において、目標とプロセス管理は欠かせません。特にコールセンターのプロセス管理において重要な役割をもつのがKPIです。KPIを正しく設定し適切に管理することで、組織全体やオペレーター個々の課題に気付けるようになり、改善を図ることで業務生産性の向上に貢献します。
しかし、コールセンター運営において何をKPIとすれば良いかわからない方も多いでしょう。そこで本記事では、コールセンターに必要なKPIを役割とあわせて解説していきます。コールセンターのスーパーバイザーをはじめ、マネジメントに携わる方はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.KPIとは?
- 2.KPIの役割
- 2.1.①行動が明確になる
- 2.2.②評価基準が公正になる
- 2.3.③組織や個人の強みや課題が明確になる
- 3.コールセンターの応対品質KPI
- 3.1.応答率
- 3.2.放棄呼率(放棄率)
- 3.3.平均応答速度(ASA)
- 3.4.サービスレベル(SL)
- 4.コールセンターの顧客満足度KPI
- 4.1.顧客満足度(CS)
- 4.2.顧客推奨度(NPS®)
- 5.コールセンターの効率性KPI
- 5.1.稼働率
- 5.2.平均通話時間(ATT)
- 5.3.平均後処理時間(ACW)
- 5.4.平均処理時間(AHT)
- 5.5.1コール単価(CPC)
- 6.コールセンターのマネジメントKPI
- 7.KPIツリー(相関関係図)
- 8.まとめ|コールセンター運営には適切なKPI設定とマネジメントが欠かせない
KPIとは?
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、「重要業績評価指標」を意味します。企業経営では、売上目標や利益目標といったゴール(KGI)があります。定めた期日までにゴールを達成するためには、プロセスを細分化しそれぞれの進捗状況の確認が必要です。
たとえば、「元日に富士山で御来光を拝む」というKGIを立てたら、そこから逆算をして、いつまでに何合目まで辿り着くといった中間目標を立てます。その中間目標となる指標がKPIです。
KPIは一つとは限らず、複数のKPIが設定されることもあります。ただし、そのすべてがKGIの達成につながっている必要があります。KPIを可視化することで、最終目標達成までの進捗状況が可視化されるため、もし進捗が遅れている場合は、方向修正や改善に取り組みやすくなります。
KPIの役割
ビジネスシーンにおいてKPI設定は大きな役割を果たします。KPIを設定せずにゴールだけを追い求めても、いつまでに何をすべきか定まらず、時に判断の遅れにつながります。KPIの役割は大きく3つ挙げられます。
①行動が明確になる
KPIが設定されると、個人やチームのやるべきことが明確になり、ゴールに向かって着実に進むことができます。
組織のリーダーがゴールと方向性を示すことは、メンバーのモチベーションにもつながります。チームがどこを目指しているかわからなければ、メンバーは不安や迷いが生じ、個々のパフォーマンスにも影響します。
結果として組織が目指すゴールの達成が難しくなりますし、仮に達成できたとしても達成要因がわからないため、次回に活かすことができません。
②評価基準が公正になる
KPI設定を通じた数値の見える化により、達成度合いが明確になります。オペレータごとにKPIの達成度合いを確認することで、人事の評価基準としても活用できます。
たとえばコールセンターで応答率のKPIを90%と設定した場合、達成したコールスタッフと、未達成のコールスタッフではスキルに差があるはずです。
ただしKPIだけで評価を決めてしまうと、数字ばかりに意識が向いてしまうため、組織に潜む問題の発見など、本質的な課題を特定できない場合があります。数字は動かぬ事実ですが、その背景にはどのようなことが起きているか、行動も併せて確認することが重要です。
③組織や個人の強みや課題が明確になる
KPIを設定することで、各指標の進捗状況が明確化されるため、組織やオペレーター個々の強み・課題が明確になります。強みは自社の成功パターンとして汎用化させることで組織力向上につながります。反対に進捗が悪いKPIは課題として捉え、改善が必要です。
特にオペレーター個人の場合は、組織平均と比較することで、自分の進捗が良いのか悪いのかがひと目でわかります。たとえばコールスタッフAさんと、Bさんで顧客満足度に差がある場合、両者の応対内容を比較することで問題点に気づけるでしょう。
平均よりも高いパフォーマンスを挙げているコールスタッフがいる場合、応対内容を整理することで、組織のノウハウとして汎用化も可能です。
コールセンターの応対品質KPI
コールセンターにとって応対品質は、業績達成にも影響する重要な指標です。応対品質の向上を図ることは、結果として顧客満足度にもつながります。ここではコールセンターの応対品質に対するKPIを4つ紹介します。
応答率
応答率とは、かかってきた電話に対してコールスタッフが対応した割合を指す指標のことです。応答率が下がる要因としては、人手不足や一時的な着信数の増加などが考えられます。
<計算式>
応答率=対応件数÷着信件数×100
応答率の低さは、顧客満足度の悪化にも影響を及ぼします。コールセンターでは、特に応答率を重視する傾向があり、その多くが応答率90%以上を目標に掲げています。
放棄呼率(放棄率)
放棄呼とは、「アバンダンコール」とも呼ばれ、オペレーターが着信に対応する前に切れてしまったコールのことを指します。その放棄呼が発生した割合を示すのが放棄呼率です。
<計算式>
放棄呼率=放棄呼数÷着信件数×100
放棄呼が発生する要因としては、何度コールしてもつながらない、案内ガイダンスが長い、システム側の不具合で電話が切断されたなどが挙げられます。
平均応答速度(ASA)
平均応答速度(ASA=Average Speed of Answer)とは、着信から応答までにかかる平均時間です。ASAが短ければ、顧客を待たせずに対応できていることになります。
<計算式>
平均応答速度=応答までに掛かった時間の合計÷着信件数
たとえば、着信件数が2,000件のコールセンターが、応答までに掛かった時間の合計が40,000秒だった場合、ASAは20秒となります。一般的には、ASA20秒以内が目安とされていますが、コールセンターの案件内容や人員体制によって異なるため、継続的に測定しながら、社内での検証が必要です。
サービスレベル(SL)
サービスレベル(SL=Service Level)とは、オペレーターが設定時間内に対応した着信件数の割合を示す指標です。
<計算式>
サービスレベル=設定時間内の対応件数÷着信件数×100
たとえば、設定時間を20秒としたコールセンターが、着信件数500件のうち、設定時間内に対応した件数が400件だった場合、サービスレベルは80%となります。
応答率との違いは、顧客を待たせた割合を算出できる点です。そのためサービスレベルは、コールセンターの対応品質向上のKPIとして用いられます。
コールセンターの顧客満足度KPI
顧客満足度はコールセンターを利用した顧客の満足度合いを測る指標です。電話を通じて直接顧客と接するコールスタッフの対応は、企業イメージやサービスのブランド力に直結します。ここでは、コールセンターの顧客満足度の指標となるKPIを2つ解説します。
顧客満足度(CS)
顧客満足度(CS=Customer Satisfaction)とは、企業が提供する商品・サービスに対して、顧客がどれくらい満足したかを表した指標のことです。顧客満足度が高ければ、リピート率の向上にもつながりますが、反対に顧客満足度が低ければ、売上の毀損やクレーム発生の要因になります。
顧客満足度を調べるためには、顧客アンケートなどを通して、顧客から直接回答を得ます。5段階評価で満足度を数値化することで、KPI設定に活かすことが可能です。
顧客推奨度(NPS®)
NPS®※とは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で顧客推奨度を測る指標です。顧客推奨度とは、企業やブランド、サービス・商品に対する顧客の愛着心・信用度を測る指標です。顧客のサービスに対する評価を測定する有効な方法として認められています。
NPS®では、0〜10点の 11段階の点数に応じて、回答者を「批判者」「中立者」「推奨者」に3つに分類します。
● 9~10点/推奨者(Promoter):対象サービスを日頃から愛用し、周りの人にも勧めている
● 7~8点/中立者(Passive):対象サービスに対して中立的で、良いとも悪いとも思わない
● 0~6点/批判者(Detractor):対象サービスに対してネガティブで、周囲に悪い口コミをする可能性がある
<計算式>
NPS®=「推奨者の割合」ー「批判者の割合」
たとえば10人の回答のうち、推奨者が6人(60%)、中立者が1人(10%)、批判者が3人(30%)の場合、NPS®は60-30で「30」です。
※NPS®はサトメトリックス、ベイン・アンド・カンパニー、 フレッドライクヘルドの登録商標です
コールセンターの効率性KPI
コールセンター運営において効率的な運営は欠かせません。ここでは、コールセンターの稼働効率性を測るための5つのKPIを紹介します。
稼働率
稼働率とは、オペレーターの労働時間に対する、顧客対応に費やした時間の割合を示した指標です。
<計算式>
稼働率=(応対時間+保留時間+後処理時間+待機時間)÷総労働時間×100
稼働率が高いほどオペレーターが顧客と接触していることになります。ただし、稼働率の高さが必ずしも成果(成約・受注など)と比例するわけではありません。また稼働率の高さを意識し過ぎてしまうと、スタッフが業務ストレスを抱えることもありますので、就業満足度と併せて確認が必要です。
平均通話時間(ATT)
平均通話時間(ATT=Average Talk Time)とは、顧客との通話に費やした平均時間です。
<計算式>
平均通話時間(ATT)=通話時間の合計÷総コール数(対応件数)
たとえば、通話時間の合計が540,000秒(9000分/150時間)、総コール数が3,000件の場合、平均通話時間(ATT)は180秒(3分)となります。
平均後処理時間(ACW)
平均後処理時間(ACW=After Call Work)とは、顧客との通話後の後処理に費やした平均時間です。ここでいう後処理とは、応対記録の入力や通話内容に応じた手続きを指します。
<計算式>
平均後処理時間(ACW)=後処理時間の合計÷後処理対応件数
顧客特性や案件内容によって差が生じる指標です。
平均処理時間(AHT)
平均処理時間(AHT=Average Handling Time)とは、顧客との通話や後処理などに費やした時間の平均を指します。平均処理時間は、平均通話時間(ATT)と平均後処理時間(ACW)の和で算出します。
<計算式>
平均処理時間(AHT)=平均通話時間(ATT)+平均処理時間(ACW)
平均処理時間を下げるには、ATTあるいはACWいずれか、あるいは両方を下げる必要があります。
1コール単価(CPC)
1コール単価(CPC=cost per call)とは、電話対応1件あたりに発生する費用(コスト)のことです。
<計算式>
CPC=コールセンターの総コスト÷処理件数(対応件数)
総コストはコールセンター運営に掛かる費用すべて、すなわちオペレーターに支払う給与(人件費)や、施設費・諸経費が含まれます。
コールセンターのマネジメントKPI
コールセンターでは、オペレーターの存在が欠かせません。せっかく採用したオペレーターが離職をしてしまえば、あらたに採用と教育が必要になるため、業務生産性にも影響します。
マネジメントに関するKPIを設定することで、組織の人的課題に気づくことが可能です。ここではマネジメントに関するKPIを2つ紹介します。
欠勤率
欠勤率とは、オペレーターの勤務予定日数に対する、欠勤日数の割合を指します。
<計算式>
欠勤率=欠勤日数÷勤務予定日数×100
たとえば、月間の勤務予定日数が20日で、欠勤日数が3日の場合は欠勤率15%です。欠勤率が高くなる要因は、個々で事情が異なる面もありますが、部門全体で欠勤率が上がっている場合は、組織上の問題が潜んでいる可能性があります。
オフィス環境が不衛生、人間関係によるストレス増加、過重労働の慢性化などさまざまな要因が挙げられます。昨今では、従業員のコンディションを把握するために、組織サーベイなどを導入する企業も増えています。
離職率
離職率とは一定期間内において、(オペレーターの)在籍数に対し、離職したオペレーターの割合を指します。
<計算式>
離職率=離職者数÷労働者数×100
一般的には年間(年度)で算出されることが多いですが、アルバイト・パートなど、比較的人の流れが流動的である場合は、月単位で計算します。たとえば、4月1日の在籍数が100人で翌年3月末日時点での離職数が10名の場合、その年の離職率は10%です。
特にコールセンターのように、人材が資本である労働集約型の業態において、離職率の高さは経営課題に直結します。そのため、いかにオペレーターが日々の業務に働きがいを感じ、定着し続けられる環境を作ることが重要です。
KPIツリー(相関関係図)
KPIツリーとは、組織の最終目標(ゴール)となるKGIを頂点に置き、達成に必要なKPIをツリー状に配置した相関関係図です。それぞれのKPIだけを追い求めると、なぜそれが必要なのか目的が見えなくなり、手段が目的化してしまうことがあります。
目的はあくまでもKGIを達成することなので、ひとつの手段にこだわるあまり、KGIに近づかなければ意味がありません。KPIツリーを作成することで、管理者もオペレーターもなぜそのKPIが大事なのかがわかるようになります。
注意点としては、KPIツリーは「それぞれのKPI目標を達成すれば、必然的にKGIが達成する」という前提に立っています。もしすべてのKPIを達成しても、KGIが達成できなければ、設定したKPIが誤っていたことになります。その場合は検証を行うことで、次回はより精度の高いKPIツリーを作成できます。
また、設定期間内にKPIを変更することは基本的にNGです。進捗が遅れると、KPIが誤っていたのではないかと、別の方法を試したくなりますが、無闇にKPIを変更してしまうと正しい検証ができなくなります。さらに、方針が二転三転することで、現場のオペレーターが混乱してしまい、就業満足度を下げる可能性があります。
まとめ|コールセンター運営には適切なKPI設定とマネジメントが欠かせない
コールセンター運営ではさまざまなKPIがあります。KPIは設定しただけでは意味がなく、それぞれの指標の進捗状況を可視化し、常に検証・分析を行うことが必要です。
数値は事実であり、その事実の裏側にはなんらかの要因があります。検証を繰り返すことで、わずかな数値の変動にも気づくことができ、組織が抱えている問題の早期発見にもつながります。
掲げた目標を達成し続けるためには、検証・改善を素早く繰り返すことが大切です。もし、自社で適切なKPI設定や分析にお悩みを抱えている場合は、キューアンドエーのコンタクトセンターサービスがおすすめです。
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